家でタブロ コンソメ



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フランスの味を紹介する新シリーズ、「レシピブログ・家でタブロ」
今日は、ついに、「コンソメ」に挑戦!

consommé
コンソメは、もともと「完璧な」とか、「熟達した」「完成された」 という意味。

そう。まさに、完璧なスープ。黄金に澄んだ輝き、立ち上る香り、
口に含んだときのうまみ、たっぷりのゼラチン質。
歴代の王たちにも供され、愛されてきたスープだ。

その完璧なスープを、家でつくる。
すごいよね。俄然やる気出てきたでしょ?



でもね、じつは悩んでるんだ。
書き出したのはいいけど、テーマを間違えちゃったかなって。

ちょっと、家で手におえる代物じゃなかった……かな。
なんせ、
牛のすね肉(骨付き、15㎏くらいある!)をまず買ってきて、さばいて、その骨(5㎏くらい)からベースになるスープをとって(6時間+6時間くらい)、すね肉をミンチにして…。…。…。厳しいよね…。


大丈夫、大丈夫!そんなに、がっかりしないで。
家で作れる、本物のコンソメ堪能しちゃおう!

前に、フォン・ド・ヴォライユ(←)(鶏ガラと香味野菜のスープ)の作り方やったじゃない。せっかくだから、そのスープでコンソメを引こう。
なら、とことん、鶏で。使う挽肉も鶏。

今回挑戦するのは、香り高い、鶏のコンソメ(Consommé de volaille)だ!


Consommé de volaille
コンソメ・ド・ヴォライユ
鶏のコンソメ

材料(出来上がり1.5L)

フォン・ド・ヴォライユ 2.5L

鶏ももミンチ 400g
玉葱 35g
人参 35g
セロリ 35g
ポワロ 35g(長ネギの青い部分で可)
黒粒胡椒 5粒
ローリエ 1/3枚

(パセリの茎 1本)
(エストラゴンの酢漬け 1枝)
(トマトペースト 大さじ1)

塩 2g
卵白 2個分

(マデラ酒 大1)

にんにく 2片
トマト 1/2個


パセリの茎・エストラゴン・トマトペースト・マデラ酒は無ければ割愛。)



コンソメの考え方は、
もともとあるスープに「追い挽肉」して煮る。
当然、味、ゼラチン質は濃くなるに決まってるよね。
さらに、香味野菜やスパイスで香り高くする。
で、なにが完璧って、その透明度。
どこまでも澄んだスープがコンソメの証。そのために卵白が入る。

もちろん、挽肉のたんぱく質にもスープを澄ませる力はあるんだけど、卵白はさらに強力な澄ませ剤なんだ。そして、結着剤としも優秀。だからコンソメには欠かせない存在だ。
つくりながら説明していこうね。


もうひとつ。
コンソメは、「作る」「とる」って言わないで、「引く」っていうんだ。

フォン・ド・ヴォライユは「とる」。
コンソメは「引く」。

駆け出しのころ、素材から味を引き出すからだって習ったけど、
フォンだって、味を引き出して作るのに「引く」ではなくて「とる」。
ちょっと、整合性がとれないじゃんって悩んだ記憶。

完成された、完璧なコンソメの理想形があって、
そこに少しでも引き寄せる(近づける)。
だから、コンソメは「引く」。なんだと思ってる。

完璧な、完成された、あのスープを、
ひとり鍋に向かって追い求める。
孤高の戦い。
それくらい、キュイジニエにとって、コンソメを引くってことは気合が入る仕事なんだ。



とにかく、とらないで引く。

 - 明日は、私、じっくりとコンソメ引くから。

なんか、格好いいよね。




引き方。

①にんにく・トマト以外の材料で、ハンバーグをつくるみたいに練る。
②スープ(フォンドヴォライユ)で伸ばす。
③鍋に移し、鍋底から混ぜながら加熱する。70℃まで。
④加熱し続けるんだけど、混ぜるのはやめて、卵白が固まって浮いてくるのをじっと待つ。
⑤浮いてきたら、弱火にし、まん中に空気穴をあける。
⑥火加減には絶えず気を配り、でも、決して鍋の中は触らない。2~3時間。
⑦そっと漉して、静かに沸かして塩で味を調える。


手前が、
2~3㎜角の玉葱・人参・セロリ・長葱
奥が、
パセリの茎(刻む)・エストラゴンの酢漬け(刻む)
トマト(使うのは1/2個皮ごと)・にんにく皮ごと

以下の材料をすべてボールに入れて、よく練る。
鶏ももミンチ 400g
玉葱 35g
人参 35g
セロリ 35g
ポワロ 35g(長ネギの青い部分で可)
黒粒胡椒 5粒
ローリエ 1/3枚
パセリの茎 1本
エストラゴンの酢漬け 1枝
トマトペースト 大さじ1
塩 2g
卵白 2個分
マデラ酒 大1
とにかく、妥協せずに練る。

コンソメを引くというのは、
味を引き出すことと、澄ませることを同時に行うことなんだ。
そのためによく練る。
どう言うことかというと。

たんぱく質がアクを吸着するから
いったん澄ませるのは簡単。
それこそ卵白だけでもできる。
なんだけど、
そこから味を出すために、じっくり煮込まなきゃならない。
濁らせずに、煮込む。

濁る原因は、
素材やうまみが擦れてぶつかること。

スープ中に食材が散らばっている状態だと、
初めは何となく澄んでたスープが、徐々に濁っていく。

そうさせないために、
すべての食材を卵白で固めて、
食材をまんべんなく結着させる必要があるんだ。
スープの中に、結着剤であるたんぱく質を均一に存在させるイメージ。
そのために、とにかく、妥協せずに練る。

以前紹介した、フォン・ド・ヴォライユ。
白濁とまではいかないけど、透明度はないよね。

手が疲れてくるくらい粘りが出てきたら、フォン・ド・ヴォライユで伸ばしていく。
少しずつ加えて、均一に薄めてね。

鍋に移し、加熱を始めるよ!

鍋底で卵白が焦げついちゃうから
しっかり底を混ぜる。
いまのことろ、まったく澄む気配がない。
コンソメ感ゼロだけど、大丈夫。

混ぜながら、目指すは70℃

70℃になったら、温度計もヘラも鍋から外して。
もう、最後まで混ぜないからね。

このまま触らずに、中火で見守る。
(このまま混ぜ続けちゃったら、ただの具だくさんスープだ。)

だんだんと
なにかがフワーッと浮いて来てるようになってくる。


卵白がしっかり固まってきてるのがわかるよね。
このあたりで少し火を弱めて、
中弱火にして、じわっと沸くのを待つ。

ボコッボコッと、固まった塊が
周囲の鍋肌から浮き上がってくる。
温度を沸騰直前まで持っていく。


緊張の瞬間。


完全には、沸かさない。

完全にグラグラと沸騰しちゃったら、鍋中で大きな対流が起きて、
せっかく上部で固まりかけてる挽肉卵白がばらばらになっちゃう。
(→濁ってコンソメ失敗)

でも、確実に沸騰手前まで温度を上げないと、
まだ浮いてきてない塊が底にへばりついたままになっちゃう。
(→そのまま焦げてコンソメ失敗)

手は、ガスのつまみをいつでも調整できる位置でスタンバイ。
沸騰に近づけつつも、ここから徐々に、弱火にしていくよ。


完全に弱火になった状態。

目安は、大きな対流が起きないくらいの弱火。

フワーッと沸く感じ。(それよりももうちょっと弱い感じを目指す)

調整したら、鍋の真ん中あたりで
どこか湧泉みたいに優しく沸いてるところを探せ!

そこがこれからも、弱火で沸いてくるところ。
そこに、スプーンで穴を開けるよ。

そっと慎重に。
ぽっかりと開ける。

掘った挽肉卵白は、そーっと周りに散らせばOK.
この頃には、しっかり固まってるから崩れる心配も無用。
厚さも5cmくらいの頑丈な天井だ。

この穴が、重要。
この穴がないと、蒸気の逃げ道がなくなって、
スープが対流する力で挽肉卵白が崩れてしまうんだ。

必要以上に触らないで、火加減だけ慎重に調節。

穴の内部が、
もう、すっかり澄んでるのわかるでしょ?


半割にした、皮付きのにんにくはフライパンでしっかり焼き目をつけて開けた穴に沈めちゃう。

焦げる一歩手前までしっかり焼き色をつける。
コンソメの色と香りの輪郭が、よりクッキリするんだ。

皮付きのトマト1/2も、穴の大きさに合わせてカットして、同様に焼いて、穴にそーと沈める。


じっくりと2時間(できれば3時間。)

鍋の中でゆっくりじわっと対流し続けてるスープが、
挽肉卵白からうまみを少しずつ引き出して
美味しいコンソメに成長してるってイメージだ。

上部に固まった挽肉卵白が崩れないことで、
濁らない状態を保ってるんだ。





時間が来たら、いよいよ漉そうね。
まもなく完成‼

ザルにペーパーを敷いて、
漉すときも、慎重に。
ザバーッってやらないで、
ゆっくり落ち着いて。乱暴にやると濁っちゃう。
ここまで来て失敗したくないでしょ。
それこそ、息も止めるくらい真剣に。

なるべく崩さないように、ゆっくりとね。

最後の最後に、挽肉卵白、絞っちゃだめ。
(→これまた濁る原因だ)

深追いはしないで、レードルですくい取れるところまで。


琥珀色、黄金色、コンソメ色。

鶏のコンソメだから若干、色はそれでも薄め。

でも、すんごいよ。
期待値をはるかに超える美味しさだ!


Consommé de volaille
コンソメ・ド・ヴォライユ
鶏のコンソメ

小鍋にとって、そーっと沸かして、塩で味を調える。
僕は、胡椒はふらない。
感じる香りはコンソメの香りだけにしたいから。
なんたって、完璧な、完成されたスープだからね。

忘れちゃいけない。沸かすときも、そーっとね。
ぐらぐら沸かしたら、また濁っちゃう。
なんて、手間のかかる、やっかいなスープなんだ。

いやいや、それだけ、存分に愛情も込められるってことじゃない?
じっくり時間をかけて向き合って、やっと出来上がったコンソメ。
ぜひゆっくり、味わってね。





そうそう、出しガラの挽肉。
捨てないで、冷めたら冷蔵庫へ。
レストランではそれで、2番出汁をとるんだけど、
家だとちょっと無理がある。
でも、捨てるなんてありえない。
まかしといて。最高の活用術、教えちゃいます!








ランスよりもフランスらしく
受け継がれてきた本物の味を。
 

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