リヨン料理の美味しさの秘密
リヨン料理って聞いて、どんな料理かピンとくるかな?
フランスが誇る、美食の都の料理だ。さぞかしリッチで華麗で…。
いやいや、その正体はそれこそ土着の、The・地方料理!って感じなんだ。
でも、フランスの他の地方料理とちょっと違うのは、いかにも素朴で単純な料理に留まらないってことかな。なにかが違う。その違いで「美食の都」の称号を得たんだ。
その秘密、一緒に探ってみようか。
Lyon
“ Lyon est la capitale mondiale de la gastronomie.”
交通の要所としての利点を生かし、近郊の特産品を存分に活用し、世界を虜にした料理の数々。優しくも鼻をくすぐるその味の要は、炒め溶かした玉葱とワインヴィネガー。
そして特筆すべきは、内臓料理とシャルキュトリのバリエーションの豊富さ。フランス中を探しても、ここにしかない料理ばかり。でも数多ある観光サイトを覗いてみたら、特有の食材や珍しい料理だけが注目され過ぎかな。
食べることは生きること。
少しでも、安く、美味しく、栄養満点に。
リヨン料理の代表格、Quenelles(クネル)にもその想いが詰まってる。
魚をむっちりとした練り物に仕立て、ザリガニのソースを纏わせてスフレのようにぷっくり香り高く、黄金色に焼き上げたリヨンのスペシャリテだ。
Quenelles de poissons, sauce nantua
( クネル ド プワソン、ソース ナンテュア )
クネル ソース・ナンテュア
その美味しさの秘密を探るために、時代を遡って、当時の厨房をのぞいてみよう。
豪勢な食事を羨望のまなざしで眺める、あの貧しい労働者たちに満足な食事を食べてもらうためなら、どんな苦労もいとわない。
きっと、材料はすべてブルジョワたちの食事で余った副産物だ。
細かな小骨が多くて食べにくい魚の中落ちを、骨ごと丁寧にすりつぶし、そこに固くなった前の日のパンをふやかしてたっぷり混ぜて、かさを増す。肉を焼いたときに出た脂も加え、ねっとりと濃厚な味わいに。そしてラグビーボール型にきれいに成型して茹で上げる。ソースに使うのは、ブルジョワたちが身を食べた後の食い散らかったザリガニの殻。とにかくすべてかき集め、くず野菜と一緒に丁寧に炒める。時間をかけて煮込んだら、ビロードを思わせる、驚くほどの極上な仕上がりに。
もう残り物になんて見えないぞ。ブルジョワたちも羨むご馳走の完成だ。
リヨン料理の最大の特徴は、ぶれることのない労働者への愛情が育んだ偉大なる食文化にある。受け継がれる知恵と工夫、見栄と努力の結晶。キュイジニエの腕が鳴る、まさに美食の都、世界一の料理の名に相応しい。
この地で愛されるボジョレの新酒も間もなく到着。
さぁ、愛情が育んだリヨン料理と一緒に、乾杯しようか。