躍動感
「 肉を焼く 」ってこと。
焼いた肉に求めるものってなんだ？
こんなことを考えてみる。
加熱した肉のなかは、
熱くなった肉汁が動き回ってる。
だからすぐにカットすると、おいしい肉汁がみんなまな板の上に流れ出ちゃう。
オーブンからとり出したら、温かいところで少し休ませるんだ。
焼いてるときと同様、いま、肉の中がどう変化しているのか、
五感をフルに使って想像する。
肉汁が落ち着いたその瞬間にすぐ盛り付けだ。
カットした断面は艶やかなロゼ。
見た目には、肉汁の動きは落ち着いてるように見える。
でも、口に入れると、また暴れ出す。
ぐわっと、口いっぱいに主張するイメージ。
これが、僕の好きな、焼いた肉の仕上がりだ。
日本だけじゃなく、世界中で低温調理が大はやりだけど、
もうこれは好みなんだけど、僕はあんまり好きじゃない。
簡単に言えば、パックした肉をお風呂に入れる感じ。
温度設定して時間決めて、マニュアル通りに加熱した肉。
カットした断面は、周りの焼き色のついた1mm位をのぞいて均一なロゼ。
すごいよね。
あまりにキレイ過ぎて、食品サンプルみたい？
見た目は美味しそうなんだけど、総じてぬるい。
食べても確かに柔らかいんだけど、それだけ。
焼いた肉を食べてるってよりは、温めた肉を咀嚼してる、みたいな。
だって、焼いた肉に求めるイメージは、「静」じゃなくて 「動」 じゃない？
もっとこう、みなぎるものが必要じゃない？。
焼いた肉に求めるもの。
“ 躍（焼く）動感 ” があふれる仕上がり。これでしょ。
焼く動感、あふれる仔羊のロティ。
「 肉を焼く 」ってことはこういうこと。
今夜のワインはどれにしようかな？
フランスよりもフランスらしく
受け継がれてきた本物の味を。
chef