Rillons de Touraine

フランスって聞くと、Paris(パリ)のイメージが強いかもしれないけど、
実際は、Parisという大都市だけが特殊で、
フランス全土に存在する郷土色豊かな様々な地方で形成されているんだ。

ここ、ポイントだね。フランスは地方の集合体。
だから、フランス料理の根底はすべて地方料理にあるっていっても過言じゃない。

そんな地方料理の数々は日本でもたくさん紹介されているから
みんなも知ってる料理があるはずだよね。
Bouillabaisse(ブイヤベース)、Bœuf bourguignon(牛肉の赤ワイン煮)、Quiche Lorraine(キッシュ ロレーヌ)、Cassoulet(カスレ)なんかはその代表かな?

そして、Rillettes de porc(豚肉のリエット)。

フランスの庭園と呼ばれて、王侯貴族がこぞって美しい城を残したロワール渓谷の中心都市Tours(トゥール)の料理だ。
まぁ残念なことは、有名になりすぎてフランス料理だってことが忘れられてるけどね。

今日は、Parisから南西に約150km、
高松の姉妹都市、リエット発祥の地
そんなToursを中心としたTouraineの、こんな名物料理を。

Rillons de Touraine
(リヨン ド トゥーレーヌ)

あまり、聞いたことがないでしょ。
“ リヨン ”
リエットと同じ語源で、同地方の代表的な料理なのにもかかわらず、
すっごい美味しいのにもかかわらず、
日本であまり知られていない理由、僕は実はわかってるんだ。
その理由は作り方にあるんだと思う。

豚バラ肉の余分な脂、すじを取り除き、
かたまりごと、塩とスパイスで3日間マリネした後、
白ワインを回しかけてさらに1日。

豚バラ肉は大きいから冷蔵庫のスペースがとられる。
最低4日間も冷蔵庫に大きな塊が入ってるんだ。
考えちゃうでしょ?
これが、フランス料理店と看板を掲げる店でも、なかなかお目にかかれない理由。

そして鍋の中でじっくり加熱していく。とにかくゆっくりと。
たっぷりの白ワインを少しずつ加えてはセックに煮詰め、
何度も何度もキャラメリゼしながら加熱を続ける。
すると、少しずつ豚バラ肉から脂がじわじわっと出てきて、
その脂でコンフィにするイメージでじっくり火を入れていく。
竹串を刺してみて、すっと通るようになったら、
最後は温度を上げ、揚げ焼きにしていく。

なんとなく、イメージできるかな?

手間暇かけて作っても、見た目は、唐揚げと大差ない?
フランス料理に期待する華やかさが足りない?
そんことも、日本じゃマイナーな理由なんだろうな、きっと。

でもね、あふれる香り、うま味、そしてこの食感はきっと初体験だと思うよ。
今でもフランスで作られ続けるのには、訳がある。
食べればわかる、伝統に裏付けられた力強さとその説得力。


スパイスとワイン香る、カリッとジューシーな豚バラ肉。
フランス料理の本当の魅力に気づいちゃう、それが、rillons(リヨン)。

Rillons de Touraine
aux pommes fruits écrasées 
sauce au vinaigre de xérès
(リヨン ド トゥーレーヌ オ ポムフリュイ エクラゼ ソース オ ヴィネーグル ド ケレス)
 


リヨン
(トゥール伝統の豚肉料理)
 

Rillons de Touraine aux pommes fruits écrasées sauce au vinaigre de xérès


こういう、一見地味な、でもエスプリがプンプンぷんぷん匂う地方料理。
その魅力を正しく紹介することも、専門店のたいせつな使命のひとつ。
フランスが誇る、完成された地方料理の尽きない魅力。
その一端をビストロで感じ取ってほしい。
きっと、フランスがぐっと身近に思えるはずだよ。



そうだ。この料理で使うたっぷりの白ワインのことも書いとかないとね。
もちろん、なんでもいいわけじゃなく、
無骨さと華やかやさを兼ね備えた芯のある白ワイン、
同地方のVouvray を使うのがTouraine の流儀だ。


そこんとこ、よろしく。
 


ランスよりもフランスらしく
受け継がれてきた本物の味を。
 


chef

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